キシリトール新技術「XYLI-TEC」命名、二宮和起用が示す口腔ケアの転換点
ニュースの概要
ロッテは、キシリトールガム「オーラテクトガム」で30年にわたり磨いてきたオーラルケアの技術を、新たに「XYLI-TEC(キシリテック)」と名付けた。あわせて、キシリトールの新ブランドアンバサダーとして俳優の二宮和さんを起用すると発表している。これまで商品ごとに語られてきた工夫を一つの名前にまとめ、ブランド全体の信頼の軸として打ち出す動きである。発表はPR TIMESを通じて行われた。お菓子売り場の定番だったガムを、技術で選ばれる口腔ケア商品として位置づけ直す試みだと言える。
引用元: 【ロッテ キシリトール オーラテクトガム】30年進化し続けてきたオーラルケアテクノロジーを新しく「XYLI-TEC」と命名した「キシリトール」の新ブランドアンバサダーに、二宮和さんを起用!(PR TIMES)
分析・見解
技術に名前を付けることの本当の意味
今回の発表で目を引くのは、新商品ではなく「技術の命名」である。30年分の改良を一つの名前に束ねると、売り場や広告で伝えられる情報が一気に増える。消費者は成分表を読まなくても、「この名前が付いたものは信頼できる」と判断できるようになる。
これは食品業界で珍しい手法ではない。飲料の世界でも、製法に名前を付けて価値を見える化する例は多い。ただ、口腔ケアは効果が目に見えにくい分野だ。名前という「目印」の価値は、他の分野より大きいと考えられる。
二宮和さん起用が狙う年代の広がり
キシリトールガムの主な購入者は、長く子育て世代や学生が中心だった。ここに幅広い世代から支持を集める俳優を据えると、大人の男性や働き盛り世代にも届きやすくなる。
実は、この層は歯科医院への通院が後回しになりやすい。仕事が忙しく、痛みが出るまで放置しがちだからである。ガムは歯科医院に行く前の、最も手軽な入口になれる。有名人の起用は、その入口を日常の習慣に変えるための呼び水と読める。
ガム市場の縮小と、歯のケア需要の拡大
国内のガム市場は、スマートフォンの普及や間食の変化で、ピーク時より大きく縮んだと言われる。一方で、80歳になっても20本の歯を保つ「8020運動」の浸透などを背景に、予防歯科への関心は年々高まっている。
つまりガムは、嗜好品として戦うほど苦しく、口腔ケア用品として戦うほど有利になる。今回の命名は、この市場の風向きに合わせた立ち位置の移動である。キシリトールという素材名だけでは差が出にくい中、技術名で独自性を作る狙いも見える。
独自の視点として、口腔ケアは歯科と日用品の境界で動く
注目したいのは、予防を担う主体が歯科医院だけでなく、食品メーカーや日用品メーカーへ広がっている点だ。歯磨き粉、洗口液、ガム、さらには口内細菌を調べる家庭用キットまで、境界は薄れている。
この流れでは、科学的な裏付けを分かりやすく示せた企業が選ばれる。命名とアンバサダーは、その説明の入口を作る手段にすぎない。今後は、効果をどこまで具体的な数字や臨床データで示せるかが、勝敗を分けるだろう。
ビジネスへの影響
食品メーカーが技術を言語化するときの要点
自社の長年の改良を「名前」にまとめる手法は、他業種の中小企業にも使える。ポイントは三つある。まず、お客様が覚えやすい短い名前にすること。次に、その名前の中身を一文で説明できるようにすること。最後に、裏付けとなるデータを公開できる状態にしておくことである。
名前だけが先行すると、期待と実態のずれが不信感につながる。命名は、証拠を整えた後に行うのが安全である。
歯科医院や関連事業者への示唆
歯科医院にとっては、患者の予防意識が高まる追い風になる。ただし、患者が「ガムで十分」と考えて通院を減らす可能性も残る。院内でのセルフケア指導に、こうした市販品の位置づけを組み込むと、競合ではなく補完関係として活用できる。
口腔ケア用品を扱う小売や通販の事業者は、技術名や有名人を軸にした売り場づくりを検討したい。たとえば「忙しい大人のための予防コーナー」のように、世代別の提案に切り替えると反応が変わりやすい。
今後の確認項目
意思決定者が追うべき点は、XYLI-TECの具体的な中身がどこまで公開されるか、他社が追随して技術名を付ける動きが出るか、の二点である。同じ流れが広がれば、口腔ケア市場は素材名ではなく技術名で比べる時代に入る。早めに自社商品の強みを言葉に直しておくことが、次の競争に備える第一歩になる。