ニュースの概要

3D Systemsは11月2日、フランスのデジタル歯科技術販売会社BioSummer Dentalとの販売提携を拡大すると発表した。BioSummer Dentalは自社の商品群に、NextDent 300 MultiJetと呼ぶ樹脂噴射式の3Dプリンターを新たに加える。すでに欧州の複数の主要顧客への初回納入を準備している段階だという。BioSummer Dentalはこれまで、NextDentのプリンター、専用材料、設計ソフトを組み合わせたデジタル義歯の製造ソリューションを扱ってきた。今回は装置の品ぞろえが一段広がる形になる。メーカーが自前で営業網を広げるのではなく、現地の専門商社と組んで欧州の歯科技工所や歯科医院に装置を届ける動きである。

引用元: 3D Systems、フランスのBioSummer Dentalとの提携を拡大し、歯科用3Dプリンターを欧州で展開(3D Systems)

分析・見解

主役は装置の性能ではなく現地の販売網

このニュースで見るべき点は、新型機の性能よりも、誰が売るかにある。歯科用3Dプリンターは、買って置けば動く家電とは違う。材料の選定、印刷後の洗浄や硬化、設計ソフトとのつなぎ込み、不具合時の対応まで、導入後の世話が欠かせない。

フランスの専門商社は、現地の言語と商習慣で技工所に寄り添える。メーカーの本社が遠くから売るより、導入後の定着率は高くなりやすい。3D Systemsが提携を広げた狙いは、ここにあると読める。

義歯のデジタル化が進む現実的な理由

入れ歯は、従来は型取りから石膏模型、ろう型、重合まで、手作業の工程が長かった。熟練技工士の勘に頼る部分も大きく、職人が減るほど供給が細る。

デジタル義歯では、口腔内のスキャンデータを設計ソフトで加工し、そのまま3Dプリンターで造形する。同じデータがあれば再製作も早い。紛失や破損のときに、過去のデータから同じ形を作り直せるのは、患者にとっても大きな利点である。

樹脂噴射方式が義歯向きとされる背景

NextDent 300は、MultiJetと呼ばれる方式を使う。細かなノズルから光硬化樹脂を噴き出し、層を重ねる仕組みだ。表面が滑らかに仕上がりやすく、複数の材料や色を使い分けやすい。

義歯は歯の部分と歯ぐきの部分で色や硬さが違う。この色分けを一度の造形で近づけられれば、手作業の接着や着色の工程を減らせる。ただし、装置が高価になりやすいこと、材料の費用がかさむことは、小規模な技工所にとって重い負担になる。

競合との差は材料と認証で決まる

歯科用3Dプリンターでは、Formlabsやストラタシスなど競合も多い。最終的な差は、装置そのものより、口の中に入れてよいと認められた材料を持っているかで決まる。欧州では医療機器としての認証が必要で、材料と装置の組み合わせごとに確認が求められる。

3D Systemsは材料から装置、ソフトまでを一式で供給できる点が強みだ。販売網がそこに加われば、囲い込みの力は一層強まる。逆に言えば、一度導入した技工所は、材料を他社に乗り換えにくくなる。この点は導入側が冷静に見ておくべきである。

ビジネスへの影響

導入前に確かめたい三つの数字

歯科技工所や歯科医院が3Dプリンターを検討するとき、本体価格だけで判断するのは危うい。見るべきは、一本の義歯あたりの材料費、印刷後の仕上げにかかる人の時間、装置が止まったときの代替手段の三つである。

月に作る義歯が少ない場合、装置を買うより外部のデジタル製造サービスに委託するほうが安く済むことも多い。一方、年間で数百件を超えるなら、自社導入のほうが納期と利益の両面で有利になりやすい。損益の分かれ目を、自院の件数で一度計算しておきたい。

販売代理店を選ぶときの見極め方

今回の提携が示すとおり、装置の導入後に頼れる窓口は価値が高い。契約前に、故障時の訪問対応にかかる日数、材料の在庫を国内に持っているか、設計ソフトの使い方講習があるかを確認してほしい。

また、材料を指定品に縛られる条件がないか、将来のデータ形式の互換性が保たれるかも聞いておくと、後から乗り換えられなくなるリスクを減らせる。

国内の事業者が今から備えること

日本でも技工士の高齢化は進んでおり、デジタル義歯への移行は避けにくい流れである。すぐに装置を買わなくても、まずは口腔内スキャナーで取ったデータを扱う習慣を作ることが、最初の一歩になる。データの扱いに慣れた事業者ほど、後で装置を導入したときの立ち上がりが早い。

関連記事